国公立大学卓球連盟
Japan Public&National University Table Tennis League
戸田純一観戦記 
 奇想天外 ボディハイドスト〜リ〜 試合に隠された真実

 東北大学OBの戸田純一氏による大会観戦記です。ビッグゲームを独自の視点で斬る書きっぷりをお楽しみさい。
 
戸田純一(とだ じゅんいち)
 昭和38年生東京都在住。浜松北高から東北大学へ進み、常に卓球部に所属。大学卒業後NEC に入社。その間も卓球を続けるが、卓球への情熱が抑えきれず退職してニッタクに入社。ニッタクでは「もの言う従業員」として製品開発に活躍。現在はアメリカの卓球メーカーKillerspin の製品開発マネージャーを務める。国公立大学卓球連盟理事会オブザーバー、第三回国公立大学海外遠征では団長を務めた。

◆荻村杯ジャパンオープン2008観戦記
 金曜日なのだが、観客は結構入っていた。よく見たら、おばさんとお年寄りばっかりだった。老人ホームの慰問かと思ったがそうではないらしい。お年寄りは夜が早いので、夕方から夜にかけての男子の試合のときには、すでに観客席はガラガラ。超高齢者社会の問題点があらためて浮き彫りとなった。

中国の不安 :
 信じられないものを見てしまった。女子シングルス一回戦で王楠が韓国の唐イェセオに、オリンピックのアジア予選に続いて負けてしまった。しかも、セットオールから最終セット11-2という実力負けだ。元々中国人の唐イェセオ。強いのは当たり前としても王楠に2回続けて勝つとはただごとではない。バックハンドの表ソフトアタックがすばらしい。ほとんどバックスウィングのないスナップショットを、ストレートにしつこくしつこく打ってくる。反射神経も人並みを超えており、王楠のフォアクロスのフルスウィングを何本も止めていた。それにしても、王楠の調子も万全とはほど遠い。補欠制度のない北京オリンピック、中国にしてみれば、小さいながら不安が芽生えたことだろう。

貧乏揺すり :
 男子シングルス一回戦、王ハオ対吉田海偉。実力の差がそのまま出て、4対0。競る場面すらなく、王ハオが圧勝。この凡戦で印象に残ったのは、王ハオのベンチに入った劉国梁監督が、試合の始まりから終わりまで(といっても短時間ではあったが)ずっと貧乏揺すりをしていたことだ。なにをイライラしているのか。吉田ごときに一本でも得点をあたえてはいけないとでも言うのだろうか。なんというやつらだ。吉田がセットカウント0-3でリードされた第4セット、0-5とリードされた場面で吉田がタイムアウトを取った。この場面で劉国梁監督が王ハオにアドバイスすることなどなにもないと思うのだが、なにやら熱心にアドバイスしている。このセット、まだ点を取られていないんだぞ。更に、試合終了後、負けた吉田はサッサと引き上げたのに対して、劉国梁監督は王ハオに対して、ベンチでしばらく身振り手振りを交えて延々と説教をしていた。一体どうしたら劉国梁監督に褒めてもらえるのだろうか。

おとなと子供 :
 男子シングルス一回戦。高木和卓対香港・李静。ひとことで言えば、おとなと子供の試合。高木和卓は、おとなの前で子供がバタバタしているにすぎない。卓球の質が根本的に違いすぎる。なぜちゃんとコーチしないのだろうか、それともコーチした結果がこれなのだろうか?

絶好調?! :
 男子シングルス一回戦、韓陽対韓国・李ジョンウ。強敵・李ジョンウをなんと4-0。第1セットこそ競ったものの、残りのセットは、フォアとバックのコンビネーションが非常によく、打たれてもしっかりと止め、完璧な試合内容だった。この調子を北京までキープして欲しい。

韓国ピンチ!! :
 男子シングルス一回戦、韓国・オサンウン対台湾・チャンポンロン。実は今回一番見たかった選手がオサンウンだ。ケガで世界選手権広州大会を欠場したオサンウン。韓国が北京の団体戦で金メダルを狙うためにはオサンウンの完全復活が絶対条件だ。しかしながら、この試合では、あのムチのようにしなる両ハンドがまったく見られなかった。そればかりか、オサンウンには珍しく、試合中にイラついた様子を見せていた。結局、4-2でチャンポンロン。更に悪いことに、ユスンミンまでもが一回戦で香港の張ユクにまさかのストレート負け。韓国の代表3人全員が一回戦負け。もし北京でもこんな調子だったら、韓国は銅メダルさえあぶない。

 それにしても、日本人の審判はどうしてこうも主役になりたがるのだろうか?試合の主役は選手だということをどこかに書いとかないとわからないのだろうか?どうでもいいようなことで選手に注意を与えたり、イエローカードを出したりして試合を中断することが多すぎる。特にオバチャン審判。中断がやたら多くて、観客がイライラする。これも超高齢化社会の問題点のひとつなのだろうか?


◆番外編 2008ITTFプロツアークウェートオープン

 3月13日〜16日にITTFプロツアークウェートオープンが行われた。世界選手権広州大会終了後2週間とたっていないのだが、主なトッププレーヤーは、ケガの癒えていないティモ・ボル以外はほとんどすべてが参戦した。なぜなら、北京オリンピックのシングルスの組み合わせはそのときの世界ランキングをもとに決められるので、少しでもいいシードを得るため、北京オリンピックまでにランキングをあげておきたいからだ。
 このクウェートオープンで番狂わせが続出した。なにしろ世界選手権広州大会が終わってまだ2週間。そこで死力を尽くした中国の二王一馬(王ハオ、王励勤、馬林)にしてみれば、体力的にも精神的にも疲労のピークだろう。特に王励勤は、オリンピックアジア予選にも出ているのでこの3週間はほとんど毎日試合であり、なんぼこの三人が超人とはいえ、今回のクウェートオープンはあまりにも過酷すぎた。
 まず、第三シード王励勤が二回戦でフランスのクリストファー・レグーにフルセットで破れた。レグーは、北京オリンピックに照準を合わせるため世界選手権広州大会を欠場したとのこと。次に第二シード馬林が、三回戦で朱世ヒョクにやはりフルセットで破れた。セットカウント3-2でリードしていたのに、第6、第7セットを落とすという信じられないような負け方。
 そして第一シード王ハオは、準々決勝でサムソノフに1-4で退けられた。勢いに乗ったサムソノフは、準決勝で馬龍を、決勝で陳杞を破り、なんと中国三人抜きの離れ業で優勝。一月のスロベニアオープンと合わせてプロツアー二連勝を達成した。無冠の帝王が、北京までこの調子を持続すればおもしろいことになりそうだ。
 ユ・スンミンも三回戦で姿を消した。これを見ても、世界選手権の決勝まで行くことの代償がいかに大きいかがわかる。日本男子は、エントリーはしてあったのに、なぜか全員欠場した。


◆08年世界選手権観戦記(中国・広州にて)

 世界選手権広州大会観戦記 その3

 男子準々決勝  韓国 vs. ドイツ

 先に準決勝進出を決めた日本と決勝進出をかけて戦うのは、韓国か、それともドイツか。2対1で迎えた朱世ヒョク対ボルのいないドイツを背負うオフチャロフ。朱世ヒョクのカットを、強力なフォアハンドドライブと信じられないようなバックハンドで打ち抜いてみせたオフチャロフが2-1とリード。そこから、朱世ヒョクがいつもながらの驚嘆に値する粘りを見せた。オフチャロフの目にも止まらぬ強打をしのいで、しのいで、またしのぐ。オフチャロフの甘いドライブに対しては、すかさず反撃。しかし、それをオフチャロフがしのいで、しのいで、またしのぐ。攻守が頻繁に入れ替わるスリリングな展開。これぞ卓球競技の醍醐味。朱世ヒョクが粘り合いを制し、韓国を準決勝へ導いた。
 準決勝の日韓戦は、3番がカギを握るような気がする。韓国の3番は李ジュンウー。確かに強いが、ここを取らないと壁を乗り越えられない。日本の3番は韓陽だと思うが、だとすれば李ジュンウーとの壮絶な打ち合いが予想される。
 どうでもいいことだが、朱世ヒョク対オフチャロフの試合を観ているとき、すぐ横でその試合をビデオ撮影している、一目でそれとわかる、メガネをかけたマニアックなおにいちゃんがいた。ビデオを撮りながら、すごいラリーがあると頭をのけぞらせて「オーッ」とかひとりで言っているのだが、そのうち観ているだけではあきたらず、自分のラケットを取り出し(朱世ヒョク対オフチャロフなのになぜか自分のラケットは中ペン)、なにやら振りだした(素振りの様子からして、うまいとは到底思えない)。朱世ヒョク対オフチャロフの死闘をビデオ撮影しながら中ペンのラケットを振り回すメガネのおにいちゃん。これが、卓球王国中国の奥の深さなのだろうか。

 世界選手権広州大会観戦記 その2

 男子団体ディビジョン1 グループD  香港 vs. デンマーク

 男子団体予選リーグで番狂わせが起こった。前回のブレーメン大会で3位になった香港がデンマークに1-3で破れた。その鍵になったのは、2番の李静(リ・チン)対フィン・トゥグウェル。トップでメイスに取られた香港としては、2番のエース李静でなんとしても取り返したいところ。中陣からのフットワークを生かした連続ドライブの得意な李静は、けっこうヨーロッパに強く、この試合も李静が有利かと思われた。対するトゥグウェルは、中陣ドライブというより、小さくシャープなスウィングからの前陣両ハンド攻撃を得意とするヨーロッパではちょっと珍しいタイプ。負けるときは、結構あっさり負けるが、調子に乗ると打球点の早い両ハンドが炸裂する。この試合もそういう試合になり、トゥグウェルが早め早めに両ハンドで先手を取り、中陣でフットワークを使おうとする李静の左右を抜く場面が多く見られた。
 しかし、そこはさすが李静。苦しみながらも粘り、セットオールジュースへ。ここで、トゥグウェルに幸運なネットインが出て、最後に李静を突き放した。負けた李静、ベンチに戻るや、ラケットを叩きつけた。この悔しさの表現こそ、世界戦にふさわしい。
 勝ったトゥグウェル。彼とは、電話で何回が話したことがあるが、自分が好きなだけ話をしたあとで必ず「Do you understand?」と付け加える。「アホじゃないんだからわかるっつーの」と言いたくなるが、それが彼の持ち味なのだろう。

 世界選手権広州大会観戦記 その1

 男子団体ディビジョン1 グループD  ベラルーシ vs. スペイン

 男子団体予選リーグのベラルーシ対スペインは、ベラルーシが2対1でリードして、4番のエース対決、サムソノフ対何志文(ハ・シウェン)。帰化選手の何志文は、とうに40歳を越えたオジサン選手ではあるが、左のペン表速攻で、わかりずらい変化サービスから三球目オールスマッシュという非常にやりずらい選手。田崎を左利きにして、もっとサービスをいやらしくしたタイプ、と言えば想像していただけるだろうか。「このオッサンと試合したら、さぞかし不愉快だろうな」ということが、やらなくてもわかる。上海世界選手権でも、シュラガーが一回戦か二回戦でこの何志文にやられた。
 「サムソノフといえどもこのオッサンには手こずるのではないか、もしかしたら1セットか2セット、先に取られるかもしれない」と思って試合をみていた。ところがである。サムソノフには謝りたい。手こずったのは、第1セットの前半のみ。わずか2分半で何志文のすべてを見切ったサムソノフ。そこからは、両ハンドをフォア、バック、ミドルときれいに打ち分け、何志文の変則スマッシュも難なくブロックし、あの何志文が、市民大会でよく見かける単なる卓球好きのオジサンに見えるほどであった。恐るべし、サムソノフ。そのプレーレベルは、すでに芸術の域に達している。

 愛ちゃんは、こちら中国でも人気があり、韓国戦のラストで勝って、泣き笑いしながら歩いているシーンがニュースで取り上げられていた。


◆荻村杯ジャパンオープン2007観戦記
(2日目、07年6月22日)

 男女シングルスの1回戦、2回戦がおこなわれた。その中で、男女それぞれ大きな番狂わせがいくつかあった。まず女子シングルスでは、一回戦の伊藤みどり vs. キム・キュンア。世界ランキング165位の伊藤が韓国のエース、世界ランキング9位のキム・キュンアを丁寧に攻略して勝ってしまった。力任せのカット打ちではなく、打って、ツッツキ、ツッツキ、また打って、ツッツキ、ツッツキ・・・という感じで、キム・キュンアがじれて打ってくるまで粘り、その反撃をしっかりブロックしてミスを誘った。反撃を確実にブロックできるという前提があってこそ、この作戦が成り立つのだが、その前提通りのすばらしいブロックを見せた。
 男子シングルス一回戦では、ザグレブ世界選手権ベストエイトの中国・ハオシュイがのイタリアのボボシカ(と発音するのかどうかさえわからないような奴)のパワーに一蹴された。この一敗が、ハオシュイの卓球キャリアの致命傷にならなければいいが・・・。このボボシカ、2回戦ではシンガポールのヤン・チーにあっさり負けたので、なおさら心配だ。中国は代わりがいくらでもいるので、たったひとつの負けで国際舞台から消えても不思議ではない。
 男子シングルス2回戦、ユ・スンミン vs. オフチャロフ(ドイツ)。ユ・スンミンがゲームカウント1-3から3-3に追いついたので、このまま何事もなく終わるかと思ったら、最終ゲーム、なんとオフチャロフが11-1で勝ってしまった。今大会、ザグレブの上位組は総じて不調に見えた。まだ疲れが取れていないのかもしれない。ジャパンオープンは、今まで通り秋にやった方がいいようだ。
 男子シングルス一回戦の注目カードは、松平健太vs.コルベル。ご存知の通り、ザグレブでも両者は一回戦で当たり、松平健太が4-0で勝っている。伝え聞いたところによれば、松平健太自身、試合前に、「今回負けたらザグレブはまぐれだったと言われるから、勝たなければならない」と言っていたそうだ。勝たなければならない事情は、コルベルの方がより深刻だ。また負けたら「ザグレブではちょっと油断した」という言い訳ができなくなってしまう。今回も松平のしゃがみ込みサービスがよく効いた。「負けられない」というプレッシャーからさがり気味でドライブをかけてくるコルベルの攻撃を、しっかりブロックする。コルベルも、一本取るごとに声を出し、意地とプライドでポイントを重ねる。3-3の最終ゲーム、あきらかにプレッシャーのため動きの硬いコルベルではあったが、そこはさすがコルベル、11-9で松平健太を振り切った。2回戦では、岸川が再びコルベルを苦しめ、ゲームオールジュースまでもつれた。
 松平健太のしゃがみ込みサービスだが、今は背が小さいからいいけど、もし将来でっかくなってしまっても同じように出せるのだろうか?ここはひとつ、背がこれ以上大きくならないよう今のうちから万全の対策を取るべきではないだろうか。例えば、牛乳を飲まない、とか。
 日本選手でもうひとり2回戦まで残った韓陽は、オ・サンウンに格の違いを見せつけられた。

◆07年世界選手権観戦記(クロアチア・ザグレブにて)

 世界選手権ザグレブ大会 その5(07年5月28日 2:59寄稿)

 男子シングルス決勝、馬林vs王励勤

 王励勤といえども人の子、わずか2時間前に繰り広げられたユ・スンミンとの世紀の一戦の疲れが残っていないはずがない。なんだか体が重そうだ。無理もない。それほどの死闘だった。あしたのジョーなら、灰のように真っ白に燃え尽きているだろう。もし王励勤が若死にしたら、あの一戦の後遺症としか思えない。
 対する馬林は元気いっぱい。目の覚めるような三球目攻撃を連発。3-1とリードした第5ゲームも7-3。勝負あったかにみえたここで馬林に隙ができた。とたんに息を吹き返した王励勤。本来の動きを取り戻し、あたかも灰の中から蘇る火の鳥のごとく3ゲームを連取。かくして、王励勤が三度目の世界チャンピオンに輝いた。世界チャンピオンが手の中にあり、後は握るだけだった馬林。これが運命なのだろうか。

 今の王励勤は本当にすばらしい卓球をする。相手のバックブロックに対して、ほとんどフォアで回り込んでゆく。十代の王励勤は、一度バックを使うと続けてバックを使う癖があり、コーチに、「テメーっ、バックばっかり使いやがって。なんのために足があんだよ。今度回り込まなかったらぶっとばすぞ」(と言われていたかどうかはさだかではない。なにしろ中国語だったんで)と怒られていた。そのとき王励勤は19才。今の王励勤のような、フォアハンドの連打で相手をたたき伏せるような卓球は、あのときの王励勤からは想像できなかった。水谷も、高木和も、岸川も、王励勤のようなスケールの大きな選手になって欲しいと切に望む。今からでも全然遅くない。王励勤にはできたのだから。

世界選手権ザグレブ大会 その4(07年5月27日 21:04寄稿)

 男子シングルス準決勝。

 第1試合、馬林vs王ハオ

 馬林の生命線は、サービスからの三球目攻撃であり、その得点率が非常に高いことにある。ところが同士討ちの場合、相手は馬林のサービスに慣れているため、三球目を打たせてもらえないケースが多くなり、馬林にとって苦しい展開となる。
 それにしても王ハオには驚かされる。馬林の攻撃を食らわないように細心の台上処理をして、そこから裏面台上バックハンドドライブをストレートへ連発、それがほとんどノーミス。
 更に驚くべきは馬林だ。このように戦術的に不利な状況にも関わらず、乾き切った雑巾を更にしぼるようにして一本一本を積み重ねる。勝てる理由がなくても勝つ。「実は、馬林は試合中ずっと意識を失っていた」と聞かされても驚かない。ゼッケン1番の男にとって勝つために必要なものは、ラケットでも、肉体でもなく、精神ですらない。ゼッケン1番というプライドだけなのだ。

 第2試合、ユ・スンミンvs王励勤

 最高の出だしで第一ゲームを取り、そのまま突っ走るような予感を見せたユ・スンミン。しかし、ディフェンディングチャンピオンは甘くはなかった。第二ゲーム、王励勤はバックハンドフリックをストレートにきれいに二本抜いてみせ、ユ・スンミンの意識をフォアサイドへ寄せた。そこからユ・スンミンの回り込みが0.3ナノ秒遅れるようになり、バックを使わざるを得なくなってしまった。ユ・スンミンのフォアは超々一流だが、バックサイドは並の一流。ここから試合はもつれにもつれ、ついにファイナルゲームへ。
 人類究極ともいえるフォアクロスのラリーの応酬。まるで決勝戦のような会場の興奮。王励勤もすごいがユ・スンミンもすごい。一本ごとにわき上がる手拍子。それでもなお勝者と敗者を分つものはなんなのか。
 
 かくして、決勝戦は、上海と同じカード、馬林vs王励勤となった。

世界選手権ザグレブ大会 その3(07年5月26日 23:52寄稿)

男子シングルス準々決勝は、やや盛り上がりに欠けた。すべて一方的な試合になってしまった。

 準々決勝第1試合、馬林vsサムソノフ

 サムソノフは最後まで馬林のサービスに苦しめられた。なんとか打たれないようにとレシーブするのだが、ほんの少し浮いただけで馬林の三球目台上スマッシュが飛んでくる。逆に、サムソノフのサービスに対して馬林のストップは、ボールに接着剤かなんかつけているんじゃないかと疑いたくなるほど、異常に止まる。サムソノフは1セット返すのが精一杯。最後は、出すサービスがなくなっていた。

 第2試合、ワン・ハオvs朱世ヒュク

 この試合のワン・ハオをひとことで言い表すならば、「いきなり」。カットマンである朱世ヒュクがつっつくと、それをワン・ハオが両ハンドでいきなり打ち抜いてしまう。カットマンからしてみれば、「さあこれからカットで拾いまくろうか」というときに、いきなりこれではたまったものではない。4-0。

 第3試合、ユ・スンミンvsティモ・ボル

 韓国の研究力はたいしたものだ。ユ・スンミンは、ボルのほとんど唯一といえる弱点である前陣でのバックハンドを狙い打った。精神的に優位に立ったユ・スンミンが、持ち味であるフットワークと一発ドライブで、一気に4-0でけりをつけてしまった。

 第4試合、王励勤vsハオ・シュイ

 実力通り4-0で、王励勤。連日猛暑のザグレブではビールがうまい。

 明日の最終日の興味は、ユ・スンミンがどれだけ中国のトップスリーを苦しめられるかということに尽きる。アテネオリンピックの再現なるか。それとも、上海大会とおなじ決勝戦(王励勤vs馬林)になるのか。日本のみなさん、ごきげんよう。

世界選手権ザグレブ大会 その2(07年5月26日 5:54寄稿

 男子シングルスベストエイト決定戦は、好試合が目白押し。

 チュエン・チーユエン(台湾) vs 王ハオ(中国)

 過去の対戦成績から、王ハオが圧倒的に有利かと思われたが、チュエン・チーユエンが完璧なレシーブをみせ、試合はファイナルセットまでもつれ込んだ。しかし、ファイナルセットで王ハオがアフターバーナーのスイッチをオンにしたため、最後はチュエン・チーユエンをあっさり置き去りにしてしまった。「あれだけ完璧なレシーブをして勝てなかったら、どうやったら王ハオに勝てるんだ」と言いたいほどの王ハオの強さをあらためて感じた。

 馬龍(中国)vs 朱世ヒュク(韓国)

 馬龍の豪打を切って、切って、切りまくった朱世ヒュクが、2ゲーム失ったところから4ゲーム連取して接戦をものにした。この試合での朱世ヒュクのカットは、「切る」という字よりも「斬る」という字の方が適当かもしれない。カットマンの伝統と文化は、日本の方が韓国よりも上のはず。日本にも朱世ヒュクのような、「ボールを切る」のではなく、「相手を斬る」サムライカットマンが出て来て欲しい。ちなみに、前の試合でも、朱世ヒュクは、ベルギーの虎・ジャン・ミッシェル・セイブをメッタ斬りにした。

 ティモ・ボル(ドイツ)vsクレアンガ(ギリシャ)

 現代卓球のセオリーを度外視した、やけくそともとれる大振り両ハンドからの豪球はいまだ健在。ギリシャの大砲・クレアンガ。前の試合では、韓陽を撃ち落とした。そのトレードマークである両ハンド強打を両ハンドでたたき返したティモ・ボルが準々決勝へ進出。

 ハオ・シュイ(中国)vsチェン・チー(中国)

 力のチェン・チーか、技のハオ・シュイか。ラブオールからまるでジュースのような接戦を4-3で制したハオ・シュイが準々決勝へ進んだ。それにしても、チェン・チーはなぜか同士討ちが多い。前回の上海大会では、孔令輝に勝って、王励勤に負けた。今回も、ハオ・シュイとあたり、これに勝ったとしても次は王励勤という不運の組み合わせ。同士討ちとか前回当たった相手とかに対して最大の配慮をしてくれる全国国公立大学大会に出れば、こんな目に会わずに済むものを。

世界選手権ザグレブ大会  その1(5月26日 5:53寄稿)

 世界選手権ブレーレン大会の女子団体で3位になった日本女子がどれだけ世界の上位に食い込むか。おおいに期待されたメンバーが、軒並み餌食になってしまった。特に、愛ちゃん、福岡が、中国系ではなく、圧倒的に分の良いヨーロッパ(同じ選手)にやられてしまったのには驚いた。
 その一方、男子では水谷の検討が光った。男子ダブルスで水谷・岸川組が中国ペアを破り、男子シングルスで水谷がシンガポールのガオ・ニンに、破れたとはいえゲームオールにまで持ち込んだ。
 この試合、水谷が4-0で勝つかと思うほど、水谷のできは良かった。前陣についたときはガオ・ニンの強力なドライブをブロックとライジングドライブで弾き返し、後ろに下げられたときでも、フルスイングのバックハンドで盛り返す場面があった。残念だったのは、ゲームカウント3-0でリードした4ゲームめ、調子に乗った水谷のスウィングがやや雑になってしまった。それまでは、「この場面では絶対にこういう打ち方をしなければならない」という、将棋でいう最善手の打ち方を正確にこなしてきた。しかし、リードした気のゆるみか、「だいたいこんなもんで入るだろう」といったスウィングになってしまった。世界ランキング30位以内の選手がこの隙を見逃すはずがなく、第4ゲームを取ったガオ・ニンがそのまま連続4ゲームを取ってしまった。このあたりが水谷の課題であろう。前半3ゲームの「水谷A」を、3ゲームではなく4ゲーム維持すること。それができれば、世界の20位以内も夢ではないと思う。
 この他に見応えのあった試合は、ミックスダブルスの水谷・福岡組対馬林・王楠組。馬林・王楠から見れば、日本ペアはチョー格下。しかし、この現世界ランキング1位と元世界ランキング1位のペアに冷や汗をかかせた。福岡のサービスをレシーブできず何度も顔をしかめる王楠。王楠がレシーブを置きにくれば、水谷のフルスウィングが炸裂。結局3-4で負けたが、もう少し福岡の粒高ブロックが入っていれば勝てたかもしれない、と思わせる内容だった。


◆荻村杯ジャパンオープン2006観戦記(2日目、06年9月22日)

 日本女子は強かった。日本男子は弱かった。ジャパンオープン二日目は、横浜文化体育館において、男女シングルスの一回戦、二回戦が行われた。日本女子は、世界選手権ブレーメン大会三位の勢いを更に加速させつつある。エースの愛ちゃんの強さは相変わらず、金沢のブロックには更に磨きが加わり、ブラジルオープンで優勝した福岡は中国の若手を一蹴した。ティエ・ヤーナを大接戦の末に下した藤井も、オリンピックの有力候補になりそうだ。また、小野はベラルーシのVi・パブロビッチのカットを打ち砕き、そのパワーが世界に通用することを証明した。石垣、平野はともに香港のリン・リンに破れたが、元世界二位に冷や汗をかかせるだけのプレーをした。愛ちゃんを軸とした日本女子軍団が、北京オリンピックの女子団体において、伸びしろの期待できない香港をたたきのめし、地元中国と金メダルをかけた最終決戦におもむく姿を想像させてくれるような、そんな活躍だった。
 問題は、男子だ。なぜこんなに弱い?地元の利で山ほどの選手が参加し、一回戦を突破したのは、松下ただひとり。「ギリギリの勝負をして、最後に経験の差が出て負けた」というのであればまだいい。経験を積めばいいからだ。しかし、全員、まるっきり歯が立たず、相手の本気を引き出すまでもなくあっけなく死んでいった。二回戦へ進む他国の選手となにがちがうのか?もちろんすべてが違うのだが、観客席から見て明らかに違いがわかるのは、ドライブのスピード、威力だ。韓陽も、吉田も、岸川も、全然攻めるチャンスがないわけではなく、実際結構攻めている。しかし、そのボールが遅すぎるのだ。
 韓陽とか、吉田とかは、国内で見る限りではバケモノじみた強打をはなっているように見える。しかし、「世界」では、彼らのドライブはチャンスボールでしかない。相手にドライブをかけ返されて(これこそバケモノのドライブだ)、それで一巻の終わり。「日本選手よ、ラケット持って練習する前に、腕立て伏せでもして体力をつけてくれ」と言いたくなる。
 ただ、光がまるでなかったわけではない。一点のわずかな青空は、インターハイ三冠の高木和卓だ。ブレーメンで見たときよりも力強さを増しているように感じた。現時点で、水谷、岸川よりも上にランクされるべきではないか。結局、王励勤に0-4で負けたが、世界チャンピオン相手に自分のすべてを出し切ったように見受けられた。「そんなの当たり前じゃん」と言うことなかれ。だいたいにおいて、一回戦で王励勤と当たった選手は、「王励勤」という名前だけで勝手に自滅してしまう。観客席のあちこちで、「なんであのノッポのおにいちゃんは、何もしてないのに勝っちゃうの?」と母親に聞くこどもが後を絶たないほどだ(もっとも、そんなこども、見たことないが)。
 その点、高木和は随所に、他の日本選手にないようなすばらしいプレーを見せ、それが、王励勤の、世界王者にふさわしいプレーを引き出していた。高木和のおかげで、王励勤がただの「ノッポのおにいちゃん」でないことが、観客にわかってもらえたと思う。

◆第48回世界選手権観戦記(ドイツ・ブレーメンにて)

 やはり日本は世界には通じなかった。韓国におよばなかったのは当然として、ミッシェル・セイブをケガで欠くベルギーには有利かと思われたが、フタを開けてみれば、フィリップ・セイブに2点取られる始末。フランス戦では、エロワに簡単に2点取られ、めでたく13~24位決定トーナメント行きが決まった。そこで優勝すれば、13位だ。
 日本では無敵の強さを誇る吉田にして、ヨーロッパの中堅どころであるフィリップ・セイブやエロワには手も足も出ないのだから、サムソノフ、クレアンガ級とやったら、それこそ息の根を止められかねない。「世界」という名の戦場で生き抜いて来た獣達にしてみれば、吉田なぞは単なる獲物でしかないということか。
 それにしても、世界戦というものは格別だ。戦い慣れた強豪たちでさえ大変なプレッシャーに耐えながら試合していることが、その表情や雄叫びから察せられる。まさに死力を尽くした戦いであり、一方でこの時期にのんきに会社に行っているなまけものがいるというのは嘆かわしいばかりだ。「全日本」という名の幼稚園のお遊戯を見に行く暇があったら、本当の「世界」を見に行くべきではないか。

もう一発、ブレーメンから :
 やはり中国は強かった。決勝戦の韓国でさえ3-0。そんな中で最も盛り上がったのは、準決勝の中国対地元ドイツ。トップは、ゼッケン番号4番馬林対ゼッケン番号2番ティモ・ボル。言うまでもなく、ゼッケン番号は世界ランキングを表す。日本選手が背負っているような3桁の番号は、この時点ですでに絶滅している。
 4番対2番。一桁対一桁。この勝負は、文字通り桁違いの勝負になった。神業のような台上技術で先手を取り決定打を放つ馬林が1, 2セットを連取。しかし地元ドイツの大観衆がボルを支えた。馬林の速攻を見切ったかのような神業カウンターを連発。「馬林のカウンター」という話はよく聞くが、「馬林のカウンターをカウンター」という光景を初めて目にした。「ティモ、ティモ、」の大声援がボルのカウンターの威力を倍増させる。かくして、2番が4番よりも上であることを逆転によって証明した。
 ドイツは、2番手、3番手と落としたが、4番に再びボル登場。3メートル半の至近距離を隔ててあい対する男の背中には、真ん中にただ単に縦棒が引かれたゼッケン。そう、この男こそこの世で最もシンプルなゼッケンを、この世でもっとも激しい練習によって守り抜く男、王励勤。1番対2番。さあ、この世で最高の男を決めようじゃないか。
 最強のハードパンチャー対最速のカウンターパンチャー。お互い主張を譲らず、試合は最終セットにまでもつれ込んだ。「加油、加油、」、「ティモ、ティモ、」。3-5でボルがリードしてチェンジエンド。たまらず劉国梁監督がタイムアウト。激しい言葉でゼッケン1番を叱咤する。その気迫が力としてみなぎったのか、ここから王励勤が6本を連取。オンリーワンより、ナンバーワンを選んだ。